この日限りのふくしま12市町村の食材を使ったオリジナルメニュー

　生産者をお招きしてのふくしま12市町村ファンミーティングvol.１では、様々な交流が生まれていました。後編をお届けします。

｜生の声を届ける

　今回のファンミーティングでは、主に2人の生産者をゲストスピーカーとしてお招きし、営農に関することや各地域の状況についてお話していただきました。飯舘村で野菜やナツハゼの栽培と加工品を手掛けるニコニコ菅野農園の菅野クニさんからはこんな話がありました。

紆余曲折を経て、飯舘村の特産品を手掛けるニコニコ菅野農園の菅野クニさん　

　菅野さんは、2011年3月に農業高校の教師を退職するご主人と一緒に、山に自生するナツハゼを研究して飯舘村の特産品にする計画をしていました。ところが、原発事故により、自生しているものは使えなくなり、計画は白紙になってしまいました。

　さらに全村避難を余儀なくされ、移植したナツハゼも手入れができない状態に。しかし、避難先の福島市で、原発事故前に収穫したナツハゼを保存していた農家さんに出会います。その農家さんに譲っていただいたナツハゼでジャムを作り、お世話になった方に配ったところ、商品化を勧められました。そこで、平成24年度内閣府主催の起業プランコンペに応募し、見事採択。諦めかけていたナツハゼの研究の再開、そして飯舘村の帰村と再生への歩みを進めることになりました。

　2017年3月末、飯舘村は一部地域を除いて避難解除となり自宅に戻ることができました。それからお二人は、飯舘村の気象条件にあった野菜の改良に取り組み、品種登録した馬鈴薯2品目「イータテベイク」「イータテワールド」とカボチャ「いいたて雪っ娘」を育てながら、新しい品種にも取り組んでいます。

　ちなみに、クニさんは2014年にノルウェーに行った際、食べたジャガイモがとてもおいしかったそうで、その話を聞いたご主人が品種改良をして作り出したのが「イータテベイク」です。無農薬無肥料で栽培した「イータテベイク」はでんぷん質が多く、小さめのジャガイモなので皮も剥かずに食べるのがおすすめなんだとか。　

翌日、日本橋ふくしま館 MIDETTEで催事があるらしく、出店するお仲間の生産者さんも一緒に参加

｜地域の魅力を伝えたい

　川内村で昨年11月にオープンしたnaturadistill （ナチュラディスティル）川内村蒸溜所の代表、大島草太さんにも川内村の魅力、そしてご本人がこだわったクラフトジンへの想いをお話いただきました。大島さんは日本の固有植物に着目。植物ごとに蒸留し、最後にブレンドするスタイルをとっています。そのため、植物由来の香りが生き生きとしており、ボタニカルジンとも称しています。そういえば、昨年の初秋の頃、香りの主軸となるカヤの実を求めて、SNSなどで情報を求めていたことも記憶に新しいところでした。　

川内村に魅了され、川内村産のそば粉を使ったワッフルの移動販売で起業、フルーツハーブティーのブランド、そして蒸留所の設立に至る

　大島さんは栃木県のご出身で、川内村には進学した福島大学の授業（原発被災地の課題解決を学ぶフィールドワーク）で訪れます。手つかずの自然があり、水がきれいで星も近くに見える・・・ありきたりかもしれないですが、素朴な魅力が川内村の至る所にあるといいます。

　また、大島さんが川内村で出会った大人達はこれまでとは違い、生きるためだけに仕事をするのではなく、やりたいことを実現する姿に、大変な刺激を受けたそうです。

　そして、外から来る人にも『一緒にやろう』と声をかけてくれたことが、大島さんが川内村に惹かれた大きな理由のようでした。そんな村の人との交流も楽しめるように、蒸留所の2Fには、今年7月のオープンを目標にバーを建設中。ゆくゆくは宿泊先なども運営し、滞在しながらゆっくりと川内村の魅力を堪能できる場を提供したいそうです。

｜生産者との交流

　実は、今回ご協力いただいた「リラ・ダーラナ」の遠藤シェフは、福島県郡山市のご出身。しかしながら、福島を離れてもう数十年。実家のある郡山市には度々帰省するものの、ふくしま12市町村のことはあまり知らなかったといいます。今回、食材を仕入れるために生産者と直接やり取りしたり、関係者から話を聞くことで、以前よりも知ることができたそうです。

様々な食材が揃う12市町村は料理人とって興味深く、北欧料理との親和性も再現してくださったリラ・ダーラナの遠藤シェフ

　また、本日参加されていた南相馬市のごろくファームさんのお米を購入した東京在住の会員・Uさんに生産者の荒さんをお引き合わせしたところ、大変喜んでいました。食べたお米の感想を聞く荒さんも嬉しそうでした。生産者と直接話ができるのは貴重な機会であり、地域を超えての交流、そして食がつなぐ人との結びつきが感じられる一幕でした。

　購入したお米の生産者さんに会い、会話も弾みます

　終始、会場はあたたかな雰囲気で包まれていました。お腹もいっぱい、胸いっぱい。ふくしま12市町村ファンサイトでは、今後もこのような機会をたくさんつくって参りたいと思います。

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　＜関連情報＞

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取材・執筆：A.takeuchi ／協力：Restaurant Lilla Dalarna