magazine
2022年1月、阿武隈山系のほぼ中央に位置する山間の村、葛尾村にバナメイエビの養殖事業をスタートさせた株式会社HANERU葛尾。「HANERU=はねる」は、この辺りの方言で「走る、飛びはねる」という意味であり、まさしくエビが飛びはねる様子と新しい産業としてこの地域を走り回る(活躍する)という想いが込められています。食用として広く使われているバナメイエビの大規模な陸上養殖事業で村の活性化を図る現場に潜入しました。
葛尾村に新しい特産品が誕生しようとしています。「山村からエビはねる」をキャッチコピーにバナメイエビの養殖事業をスタートさせた株式会社HANERU葛尾の松延社長は、上下水道の大手コンサルタント会社の技術職出身。被災地の状況を耳にするたびに、プラント処理の工場で培ったノウハウをもとに「水産業で被災地の復興支援はできないか」と考え始めるようになっていました。
エビのようにフットワークも軽い、ピチピチの松延社長は元高校球児
そこで様々な情報を集めているうちに葛尾村の存在を知ります。葛尾村は震災で全村避難を余儀なくされましたが、2016年6月には一部の地域を除き避難指示が解除されました。しかし、過疎化が進む山間の村である葛尾村は、避難によって村を離れた人も多く、ますます過疎化が進むばかり。
現地に足を運び、都会にはない美しい自然や山々に囲まれた葛尾村を見たとき、「私の得意な上下水道事業のノウハウを活かして、村の復興に貢献したい」と強く想ったそうです。そこで目を付けたのが、食用として広く使われているバナメイエビの大規模な陸上養殖事業でした。
葛尾村の清流を使ったバナメイエビの大規模な陸上養殖場
エビの養殖技術については、縁あって甲殻類の養殖を専門に研究していた人材とも巡り合うことができ、試験運転期間を経て、晴れて今年、2025年4月から本格的に販売できるところまでにこぎつけました。
施設の仕組みを説明する松延社長
上下水道事業は私たちにとって貴重な生活インフラであり、災害時に一番困るのが水が使えなくなること。そうした緊急時の対応ノウハウも持ち合わせているのが株式会社HANERU葛尾です。まさしく、何かあれば地域をはねて(走りまわって)対応できるのです。
エビ養殖を中心としたSDGs産業クラスター構想
人材不足で地域の水道すら守れなくなってきている現実がある中で、地域の人が地域の水道を守れるようにすることは非常に重要な課題という松延社長。「このエビたちが、将来地域の名産品となり、若い人たちが戻りたい村、住みたい村、活気のある村への実現に貢献していきたい。1つの産業が様々な産業の核となり地域を守る、そんな産業クラスターを実現していくことが最終的な目標」とのこと。まだまだ挑戦は始まったばかりですが、この勢いを止めることなく、跳ね回っていただきたいと思うばかりです。
そして、2024年のFoodCampの初回はこのHANERU葛尾さんへ。開催日となった5月中旬は震災後の土壌改良のため村のあちこちに植えられたクリムゾンクローバーが花盛り。別名ストローベリートーチとも呼ばれ、新緑をバックに濃いラスベリーピンクがとても映えます。
新緑のグリーンとクリムゾンクローバーの濃いラズベリーピンクが映える
そうこうしているうちに、立派な施設に到着。何棟ものプラントが立ち並びます。この規模は国内最大級とのこと。
国内最大級のエビの陸上養殖施設
そして、スタッフの全員が村外からの移住者。平均年齢はおおよそ30~40代と村の平均年齢をググっーっと若返りさせています。スタッフの皆さんの抜群のチームワークで、楽しい見学と体験をサポートくださいました。
抜群のチームワークでさまざまな体験をサポートいただいたスタッフの皆さん
設備はもちろんのこと、生育期間の異なるエビを見せていただき、出荷までのプロセスを学びます。またエビ養殖の専門家であるベンジャミンさんによる講座を聴講。エビの養殖に日本人が貢献していることなど、興味深いトレビアがたくさんありました。
まだふ化して間もないバナメイエビの赤ちゃん
ベンジャミンさんによる知られざるエビ養殖講座
しっかり学んだあとは、こんな体験も。即席エビの釣り堀で釣り体験です。エンタメ要素もバッチり。みなさん童心に戻り、大盛り上がりでした!
そして、FoodCampならではの待望のランチタイム。メイン食材はもちろんバナメイエビ。エビ料理ならお任せあれ!とタイ料理店で長らくキャリアを積んだBestTableの芹沢シェフがお料理を担当してくださいました。生、茹で、揚げ、包み焼きなどHANERU葛尾さんのバナメイエビを余すことなく調理。エビの殻も粉末にしてオリジナルカクテルに仕上げたのは、同じくBestTableの田村マネージャー。これがとっても好評で早々にSoldout!
定番のエビの生春巻き
バナメイエビのすり身をお肉で包み、ちょっぴりスパイシーなサルサソースで
これが噂のエビの殻を粉末にしたオリジナルカクテル
(株)HANERU葛尾さんの敷地内に誂えたアウトドアダイニング
少し風がありましたが、五月晴れを絵にかいたような1日でした。最後は皆さん全員で記念撮影。もうすっかりHANERU葛尾さんの大ファンに!また一つ、ふくしま12市町村の魅力発見となりました。
チームHANERU葛尾大集合!
<関連情報>【HANERU葛尾】山あいで育てられる海老と里山をまるごと味わうFoodCamp!
-END-
取材・執筆:A.takeuchi /協力:magonotetravel